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学びと気持ちに、そっと寄り添う 神戸セミナー > コラム > 勉強はニコニコしながらできるようにしよう 〜まずは勉強を禁止にしたAくんのケース

中退・不登校でお悩みの保護者のみなさまへ

心を軽くする教育コラム

神戸セミナー流「お気軽のススメ」

勉強はニコニコしながらできるようにしよう 〜まずは勉強を禁止にしたAくんのケース

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中学生ぐらいになると、増え始めるのが不登校です。子どもが突然、学校に行かなくなると、親としては「どうして、こんなことになってしまったのか」と悩むでしょうし、なかには私のせいだと自分を責める保護者様もおられるでしょう。

しかし、原因をさぐるよりも、状況をありのままに受け止めてどうやって変えていくかを考えることのほうが有効だと考えています。そもそも、子どもの日々の活動をすべて、親が知ることはできません。仮に子どもが話してくれたとしても、それは実際に起ったできごとのすべてではありません。ましてや子どもの心の中にわきあがっている複雑な思いを、親が完全に理解するのも難しいでしょう。仮に問題の原因を追究できたとしても、過去は変えられません。

それより大切なのは、これから先どうありたいのかを考え、ともかく何かを変えることです。一つ変えれば、子どもの行動パターンが変わります。それをキッカケとして保護者も少し見方を変えてみませんか。5年先、10年先にお子さんが自分で決めた目標を達成して、みんな揃って笑顔になっている家族をめざしましょう。

 

 

  • ここからは、実際の神戸セミナーの事例から、どのように行動が変わっていったのかを紹介していきます。

 

心優しく、周りに配慮する真面目なAくんは、中学2年くらいから学校を休みがちになりました。それでも何とか通い続けて公立高校に合格し、進学しました。学力的にはそれほど問題なかったものの、気を遣うAくんはクラスの人間関係をしんどいと感じ始めました

その結果、休む日が増えていき、成績も下降していきます。さらに学校だけでなく電車通学でも人目を気にするようになり、ますます登校がストレスになりました。神戸セミナーでカウンセリングを受け、相談した結果、高校をやめて高卒認定試験を受験して大学受験を目指すと決めました。

1. まず家で勉強しない・させない
〜最初は気持ちを楽にしてあげることから

中学でも不登校気味だったAくんは高1の最初は、心機一転勉強を頑張ろうと思い、校内では上位の成績でした。ただ真面目で几帳面な性格であり、クラスの人とのやり取りにとても気を遣う傾向があり授業中より休み時間の方がしんどかったと言います。

1年間はなんとか通学したものの、2年になると勉強の負担と人間関係のストレスなどを強く感じるようになりました。その結果、欠席が増え、勉強も遅れがちになり、Aくんにとって高校は「辛くてしんどい場所」に。そして、通学する電車もとてもしんどい空間と感じるようになりました。

そんな相談を受けた私は、まずAくんに言いました。

とりあえず勉強はやめてみようか。家でも勉強しないようにしてみようよ

 

この言葉を聞いた瞬間のAくんの驚いた顔は、今でもはっきりと覚えています。不登校状態になり、ただでさえ勉強が遅れているのです。普通なら「学校には行かなくてもいいから、家でしっかり勉強できるように考えよう」とか「では、できるだけ神戸セミナーにおいで。ここでしっかり勉強しよう」などと言われるものと覚悟していたはず。ところが「勝手に勉強しちゃダメだよ」と言われたので、Aくんにすれば、まったく予想もしていなかった言葉、だからびっくりするのも当然でしょう。

もちろん、私はAくんをただ驚かせるために、こんなことを言ったわけではありません。不登校になっている子どもの多くが心のどこかで、学校に行けない自分、勉強についていけないことで「ダメな自分」だと思っています。できるものなら勉強をやりたい。自分ではそう思っているのに、うまくできない状況は本人にとって非常につらいです。だから、まずそのストレスを減らして、気持ちを楽にすることから始めました。

Aくんからすれば「勝手に勉強しちゃダメだよ」と言われたのですから「勉強できない自分が悪い」などと自分を責めなくてよくなります。保護者の方にも「決して勉強をさせないようにしてください」と念押ししました。子どもが不登校になると、勉強の遅れが心配になる親の気持ちはよくわかります。「少しぐらい勉強したら」と言いたくなるけれども、そこはぐっと我慢です。不登校で悩んでいる子どもに対しては、ストレスをコントロールし解放してあげることが何より大切なのです。

もしお母さんも冗談めかして「私が見張っていて、絶対に勉強させないからね」などと笑いながら話せたら大成功です。お父さん、お母さんの接し方が変われば、その変化は確実に子どもに伝わります。

 

2. 家で勉強しないことを条件に週1回だけ通学する
〜勉強に向き合う気持ちを変えてあげる

不登校の自分を責める気持ちがなくなった頃合いを見計らって、次の作戦を考えました。作戦はいつも、いろいろ考えます。正解は決して一つではありませんまずやってみて、うまくいかなければ違う作戦を考えます

Aくんには「最近、表情が明るくなってきたように見えるよ。もし勉強をするとしたら、一番気楽でスイスイできそうな科目は何かな?」と尋ねてみました。ここで「何もない」と返答したり、あるいは「まだ、学習はしたくないかな」と答えたりしたら、違う作戦に切り替えます。でも、Aくんは「そうですね、数学なら…そんなに嫌じゃないかも」と返答してくれました。

では試しに週に1回だけ神戸セミナーに来て、1対1で数学の個人授業を受けてみないかと提案しました。もちろん、電車に乗るのはラッシュアワーを避けて、空いている時間帯にします。ポイントは「これぐらいなら、できるかも」と思ってくれる内容を勧めることです。Aくんも「それならやってみたい」と反応してくれました。それからは週に1回のペースで決まった時間に神戸セミナーにきて、数学の勉強をします。1対1で向かいあいながら学ぶので、よくわかります。そして、わかれば面白くなってきます。

ただし、Aくんと相談して「数学以外の教科を勉強しないように。家で勝手に勉強するのも禁止だよ」と指示しました。狙いはストレスのコントロールです。不登校になった時点で、Aくんの気持ちにはかなりの負荷がかかっています。その負荷を取り除くために、Aくんの日常を「変える」のです。何かを変えれば、パターンが変わります。

2カ月ほど順調に通ってきたころに、Aくんが訴えてきました。

先生、ちょっと暇かも

 

「暇」という言葉には「何か、もう少しやってみたい」という願望が込められています。そこで「じゃあ、どうする?何がしたい?」と聞いてみました。

 

3. 週2回に通学を増やす
〜自然にやる気を育みマーク模試の偏差値は狙い通り55に

「神戸セミナーに来る回数を週2回にしてみる?」「数学以外の科目を勉強してみる?」と、尋ねてみると「数学ばかりじゃなくて、まあまあ好きだった物理もやりたい」と、Aくんは答えました。そこで物理も1対1の個人授業を受けることにしました。

全日制高校に通っていた頃に比べると「受ける授業」はもちろんすごく少なくなりました。しかし、勝手に決められた時間割で、教室で先生が一方的に話しているのを聞くのと、自分で納得して選んだ科目を1対1で反応を見ながら説明してもらえるのとでは充実感や理解のレベルが全く違います。ストレスなく気分よく学習することは、とても効果があります。形式だけではなく効果的な学習が大切です。

そもそも勉強に向き合う気持ちが以前とは変わっていて、楽しみながらやっています。Aくんはもともと理数系が得意だったうえに、楽しく気分よく学習することで、ますます数学と物理が好きになり、学力は伸びていきました。

しかも、ときには自分から「今日は少し気分が乗らないので」と途中で切り上げて欲しいと言えるようになりました。ここまでくれば、もう安心です。

家での学習は、理解している範囲に限定してレベルの合った教材を指定します。その範囲で自宅学習もしてもらうことにしました。ただしやりすぎないこと。学習にストレスを感じることをとにかく回避しました

同じようなやり方で数学、物理に続いて少しずつ勉強する教科を増やしていきました。この調子なら模試を受けたときの成績がだいたい予測できる。そう確信できたので、高2の3月に行われる模試を試しに受けてもらうと、予想通り偏差値は55ぐらいまで上がっていました。

こうなると自信がついて、ますます気分よくなります。

高3になるときに、そろそろ志望校を決めようかという話をだし、一緒に検討しました。「大学のことはよくわからない、学部も知らない」とAくんは言います。「数学が好きなんだったら、大学でも数学をメインにする理学部数学科というのがあるよ」と伝えると「それは良いですね。それにします」と反応します。地元の私立大学の理学部数学科を例示すると「自宅の近くです、知ってます」と言うもののそれほど乗ってきません。試しに「国立の神戸大学にも理学部数学科があるよ」と伝えるととても嬉しそうな顔をしました。

「先生、、、、、、もし僕が神戸大学に受かったら、出身中学や高校の先生たちは、、、、どう思いますかね?」と尋ねてきました。「えっ、、う~ん、、、そうやな、、、。たぶん信じられないと反応するやろね」と返答すると、Aくんは満面の笑顔で「そうですよね。じゃあ志望校は神戸大学で!」と言いました。

自分が不登校だったこと、高校を中退したことを逆手にとって、そこからこんな大学に合格できたらすごいだろうなと考えるようになってくれています。学校でしんどかったころとは気持ちがまったく変わりました。高3となる新年度からフルサポートコースに移り、最初は週3日で通うことにしました。

一浪の末、トップクラスの国立大学に合格

神戸大学を志望校にしましたが、いきなり5教科7科目すべての勉強に取り組むようなことはしません。1年ほどAくんと向き合ってわかったのは、以前と比べればずっと楽になったように見えてはいるけれど、教員との面談では「まだまだしんどくなるときがある」ことです。だから、ストレスのコントロールには細心の注意を払いました。

数学、物理に続いて本格的に始めたのは英語です。とはいえ、これもとにかく無理しない・させないよう気をつけながら、まずは英単語の覚え方から始めて、文法の基本を少しずつ入れていきました。

Aくんの表情を見ていると、楽しそうで明るい感じです。そこで国語も含めて少しずつ受ける授業を増やしていきました。気分良く勉強しているので、学力は着実に上っていきます。センター試験の結果は、約7割にまで到達しました。自宅近くの私立大学はもちろん、関関同立も狙えるレベルまできています。

そこで改めてAくんに、どこを受験しようか尋ねました。彼の答えは、神戸大学一本に絞りたいとはっきりしていました。残念ながらセンター7割では厳しいし、そもそも二次試験の対策はまだできていません。だから率直に「今年はちょっと厳しいと思うよ」と話したところ、Aくんは「今年じゃなくていい。もう1年がんばるから」と答えたのです。結果的に1年後、Aくんは当初狙っていた神戸大学よりも、さらにワンランク上の理学部に合格しました。もともとAくんが通っていた高校から国公立大学に受かるのは、年間数名程度で、Aくんが合格した大学にこれまで受かった人は一人もいないそうです。

神戸セミナー校長・カウンセラー

喜多 徹人Kita Tetsuto

滋賀県立膳所高校時代、硬式野球部1番セカンドで夏の甲子園出場。
(県予選での「5試合で3塁打6本」は今も滋賀大会記録)
駿台予備学校で2浪の後、京都大学法学部へ進学。
学生時代は、母校の野球部のコーチ、家庭教師、学習塾の運営と講師を経験。生徒、保護者、教諭対象の進学講演の講師として年間90回の講演を担当している。趣味は多彩で、混声合唱、クラシック鑑賞、プロ野球観戦、アメフト観戦、テディベア収集、カメラなど。